兵庫県議会議員 くりやま雅史
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政治への想い地方分権時代における地方議員の役割

【以下はくりやまが感銘を受けた論文です。】

地方分権時代における地方議員の役割

東洋英和女学院大学講師 真鍋貞樹

 日本も地方分権の時代を迎え、地方議員の役割も変わりつつある。これまでの中央集権的国家構造のもとでは、地方議員の果たす役割は行政に対する「監視役」あるいは行政と住民との「架け橋」だった。中央集権とは、地域が自律的に判断し行動することの許容範囲が狭いことを意味し、その結果、地方議員はその許容範囲の中でどれだけ行政が公正・公平かつ効率的な自治体運営を行っているかをチェックすること、そして住民の個別利益の要求に応えることが主たる任務だったのである。あからさまに言えば、地方議会とは自ら政策を提示しなくとも、役所の「奥の院」として存在することだけで、十分その存在意義があると考えられていたのである。
 しかし、地域が自ら考え、自らの責任のもとで行動する地方分権の時代になった時、「監視役」、「架け橋」、そして「奥の院」として存在することだけでは、地域代表として議員の役割とすることができなくなった。地方議員が自ら政策を考え、提示され、そして政策実現のために行動することが求められてきているのである。

地方議員の周辺環境の変化

 地方分権化の大きな流れの中で、議員をとりまく環境は、政治、社会環境など様々な領域で変化している。それらは、複雑に絡み合っており、絶対的なものとして、議員の存在価値を変えつつある。そこで、どんな変化があるのかを示しておこう。

(1)情報社会の進歩による住民と議員の情報の共有

かつてのように、自治体の持つ情報を官僚と地方議員だけで独占している範囲は確実に狭くなっている。それは、マスコミの発達とインターネットの発達に由来している。高度な専門知識を含めて、住民は知りたいと思えばほとんどの情報を瞬時に得ることが可能となりつつある。官僚や議員という政治的エリートのみで情報を独占していた時代は終わった。しかし、住民が情報を簡単に得られる社会となっても、その情報はマスコミやインターネットを経由することによって偏在や偏向する。そこで、政策に関する正しい情報を住民と議員がいかに共有するかが求められてきている。

(2)都市規模の拡大

大都市への住民の集中が進むにつれて、年における議会制民主主義そのものの限界性があらわれてきつつあることである。それは、自治体の合併の急速な進歩とも無縁ではない。都市規模の拡大は、財政的な余裕をもたらすと考えられる一方で、地域民主主義にとっては確実にその後退をもたらしている。代表者である議員と住民との距離は、物理的にも精神的にも離れていくからである。情報は共有できたとしても、それを共通の議論の場に持ち出すことが大都市の場合にはより困難になってきている。

(3)イデオロギー対立の社会の終焉

20世紀はイデオロギーの時代であった。それは、地方自治台の現場でも無縁ではなかった。学校現場での国旗や国家の問題がようやく今日解決をみつつあるのも、20世紀型のイデオロギー対立が終焉を迎えつつある証明である。しかし、一方で、あらゆる分野において経済合理性のみが重視される社会へと変化してきてある。その結果、イデオロギーを排除する風潮が高まるにつれて、自由や民主主義といった大切な思想的価値までをも語る場所がなくなりつつある。地方議員ですらも思想を語ることがなくなり、経済的効率性や合理性のみを政策の価値基準に置いている。

(4)「市民社会」の興隆

イデオロギー対立が終焉を迎えたことで、市民の自発的な活動の範囲が広がってきた。市民の自発的な活動の広がりは市民社会の勃興を意味する。かつて政治の現場では、国家と対立するイデオロギー的な市民社会の勃興を抑えることに苦慮した。しかし、今日ではむしろ国家や地域社会を市民も担うために、官僚機構と協働する主体としての市民の存在が求められてきている。
 一方、市民社会の広がりは、議員という存在意義の変化をもたらしている。それは、住民代表としての「名士的意義」の低下である。名士的意義としての議員の権威がもつ機能は、地域の紛争の調停者的なものだった。それはそれで存在意義があったが、市民社会の広がりの中では、調停役のみではなく、地域の市民社会を健全なものにしていく姿を描いた政策を提言し、実行していくという議員本来の役割が求められてきている。

(5)行政国家現象の進歩

市民社会の勃興と同時に、一方で政治や社会のあらゆる政策課題の解決を行政に求めていく行政国家現象はますます進行している。国民あるいは住民自身も、全ての政策を行政の責任と
義務におきかえて、全てを行政に「お任せ」していることが、その進歩を一層促進している。そうした「お任せ民主主義」の国家や地方自治体では、政策の立案、決定そして実行に至るまで官僚依存と官僚主導によってあらゆる地域政策が決定、実行される社会から、住民の代表であり政治家である地方議員がリーダーシップを発揮し、健全な地域社会へと導いていくことが求められている。

地方議員の新しい存在意義

 以上のような環境の変化をもたらしている地方分権社会とは、地域のことは地域が考えるという社会である。地方分権社会とは、問題解決のモデルはあったとしても、それそそのまま自分の地域に当てはまることはできない社会である。地域には地域の歴史、独自性そして特徴があるのだから、住民代表である議員が自ら解決の道筋を見出していかなくてはならない社会である。その時、地方議員の役割はどのようなものになるだろうか。

(1)「政策決定者」としての役割の再確認

 議会は地域の政策を「決定」する権限と責任がある。その決定とは、官僚が作り上げた政策へ最終的な「お墨付き」を与えるだけのものではない。議会での最終決定に至るプロセスをいかに重視するかである。そのプロセスを重視するとは、より多くの地域住民の政策的意識を「調達」していくために、議会自らが政策に関する議論の場を幅広く持つことができるかである。議会は「決定」すれば良いのではなく、「決定」に至る議論の場所を確保することが大切になっている。
 もちろん、議会内で一般質問などによって議員が政策を語ることは重要である。しかし、議会内だけではなく地域住民といかに政策の議論の場を造るかが課題である。それは個人後援会での講演会の開催にとどまらず、議会全体として議会での政策決定過程において地域住民との政策議論の場をどのように造っていくかである。

(2)「架け橋」「監視役」から政策の「デザイナー」へ

 議員の役割は、単純な「架け橋」「監視役」だけにはとどまらない。議員自ら地域社会全体の政策的なコーディネート役を担わなくてはならない。つまり、議員自ら発意する政策によって自治体をデザインすることである。例えば、選挙で「明るく豊かなふるさとを造ります」という曖昧なスローガンを掲げるだけではなく、そのスローガンを具体的に政策レベルでどのように造っていくのかを、住民と一緒になって掲示する必要がある。それがマニフェストである。マニフェストは「選挙公約」であると同時に、住民とともに実現を目指していく個別的具体的な政策である。
 残念ながら、日本の地方自治制度において、地方議員が直接自らの権限として自己のマニフェストに盛り込まれた政策の遂行をすることはできない。しかし、政策の全体像をデザインしていくことは可能である。地方分権時代とは、これまでのように地域の政策的なデザインを官僚だけに任せておけばそれで済んだ時代ではなくなったのである。

終わりに

 21世紀となってイデオロギー対立の時代が終焉を迎えたとしても、思想を持つ政治的主体としての地方議員の存在は、むしろ重要なものになっている。とりわけ日本の現代社会には、経済的合理性や効率性ばかりが優先される社会において、その犠牲となる個人の尊厳や自由といったものをいかに地域社会でまもっていくかという大きな課題が横たわっている。
 こうした個人の尊厳や自由といった価値を地域社会で守ろうとする役割を担うのが地方議員にほかならない。官僚はそうした個人の尊厳や自由よりも法令を優先する。地域住民はそうした法令優先の官僚組織に中に埋没してしまっている。そうした社会が守るべき思想的価値というものを、政治家たる地方議員が忘れてはならないだろう。
 そして、個人の尊厳や自由を脅かす偏狭なイデオロギーをいまだに引きずる政治勢力、全体主義的要素を内包している政治勢力と地域において闘い、自由で民主的な地域社会の建設を進めていく地域政治の最先端に位置するリーダーが地方議員である。
 しかも、地方分権の時代とは、政策を中心により多くの地域の関係者が集まって議論し、そして政策を決定してくことが求められる社会でもある。地域の関係者とは、官僚や地方議員だけではないことは言うまでもない。地域住民の地域のNPO団体、企業そして労働組合といった諸団体を含めてである。
 こうした、より多くの当事者が集まり、政策を中心として新しい地域社会をデザインしていくリーダーとしての役割が、地方分権時代における地方議員に与えられた新しい役割である。

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